先日の記事でもご紹介した東京で創業400年という
豊島屋本店さんの
酒蔵見学に行ってまいりました。発砲うすにごり生酒
『綾』の製造・販売元でもあります。
多くの方にご力添えを得て一つのミッションがひととおり終了したという事で、今回はそのミッションの中のメイン、すなわち「視覚マーケティング」の導入と実践をご紹介します。
STEP-1 視覚マーケティングの考え方をおさらい(ゴール設定)
視覚マーケティングの成功とは、ブランドを育てながら付加価値を創りだし既存品の売上げを増やしていくという、ブランディングが鍵になっていくマーケティングの考え方です。そして成功に欠かせない3つの要素が下記になります。
1.ブランドを育てながら
2.高付加価値商品を創りだし
3.既存商品をマーケティングしてさらに売る
(amazonレビューより「視覚マーケティングのススメ」)
これを豊島屋本店さんの件にあてはめてみますと・・・
1.
「豊島屋」ブランドを育てながら
2.高付加価値商品
「綾(新商品)」を創りだし
3.既存商品
「金婚」「十右衛門」etc...もこれをフックにして売上をあげていこう
というものです。
費用対効果の高いデザインを望むなら、販促予算のありったけを
「既存製品の売上に貢献しない新製品のプロモーション」に使ってしまってはだめなのです。ブランディングのためのデザインとは、トラディッショナル製品の売上もアップできるマーケティングとしてのデザインリニューアルであり、新製品の競争力を高める「開発の1部としてのパッケージデザイン」でなければなりません。つまりここがゴールであった訳です。
STEP-2 失敗しないデザインリニューアルの3つのポイント(戦略立案)
1.既にあるデザイン的な資産をどうするか[現状イメージの踏襲方針]
2.支持されていた「好み」や「クラス」のリサーチ[市場にマッチングするための調査]
3.リニューアル後の評価軸の決定[結果・シナリオの立案]
(「視覚マーケティングのススメ」より)
これを豊島屋本店さんの件にあてはめてみますと・・・
1.既にあるデザイン的な資産→「金婚」ロゴママイキで活かす
2.支持されている「好み」や「クラス」のリサーチ→「日本酒好きでなく、日本酒以外のいわゆるお酒好き」までをターゲットとできないか。ワインやシャンパンのボトルは持ちやすくてお洒落だが、日本酒もそのように「お使いもの」に使ってもらえるボトルのデザインに出来ないか。
3.リニューアル後の評価軸の決定→すっきりしている、洗練されている、上質感がある。クラスアップ
つまり、お酒を飲めない人のために甘くしたり割って度数を下げて呑んでもらおうということでなく、
●日本酒以外のお酒好きの方
●以前は日本酒をよく飲んでいたのに最近は余り呑んでいない
●本当は日本酒が好きだけれども、最近呑む機会があまりない。あるいは量が減った
●パーティやセレモニー、お土産にシャンパンやワインを購入
このマーケットに対してなら、豊島屋の酒造りの本質を変えずに、新商品開発とデザインをセットでマーケティングできるのではないかということになったのです。そして、この
ポジショニング戦略がデザインの「トーンアンドマナー」を採用するための戦略に直接繋がっています。デザインを変える事で市場を拡大、活性化していこうということなのです。
STEP-3 戦略とデザインをリンケージ(デザイン戦略の実装)
1.キータイプフェイスの選定[ヒラギノで、クールに。和でありながらスタイリッシュ]
2.キーカラー[あえて特定の色の印象をつけない。強いて言えば白ベース]
3.キービジュアル[酒、あるいはロゴ。二つ以上のモチーフをメインにしない事でメリハリデザイン]
4.ホワイトスペースの確保[限定1000本の特別感のためにあえて宣伝文句を入れない]
つまり
「豊島屋という酒蔵メーカーをもっと多くの人に知ってもらおう、東京の酒蔵ってあまりピンとこないけどこんなに真面目にお酒を造っているのよ、ほら呑んでみれば本当に美味しいでしょう?」という事を「新商品自らがまるで美人広報のような役割を担い、ブランディングに貢献する」という、そういうミッションがあってこそ、このデザインなのです。
今回の酒蔵見学には、以前ブログデザイン勉強会でお世話になった
ネタフルの
コグレさんにお声がけして頂き、豊島屋さんにご興味をもって頂けそうな方数名をお誘いしました。社長の吉村さんには、「新聞や雑誌の記事広告と違い、ブロガーさんはお誘いしても必ずしも記事にしてくれるとは限りませんよ!」と強く念押しした上で「でも、商品にこんなに自信があるのだから、是非、皆さんにお越しいただきましょう!!」と今回の蔵見学の決行となりました。
そして、吉村社長!ご同行頂いた皆さんが既に記事にしてくださいましたよー。酒蔵見学の様子は、是非こちらを御読みになってください。
→金婚・豊島屋酒造の酒蔵見学:創業慶長元年のサステナビリティとチャレンジ ([の] のまのしわざ)
→豊島屋酒造さんの酒蔵を見学してきました。 |オーシャンブリッジ高山のブログ
→夏に蕎麦屋で飲みたい!東村山にある蔵元「豊島屋酒造」の微発泡純米うすにごり生酒 - もともこも鳴き笑い
↑もとこさんから動画を御借りして来ました
ちなみに「綾」はおかげさまで発売から1週間を待たずに、季節限定生産1000本の内の半数以上が売れてしまったそうです。1年のこの機会を逃すと、「綾」は来年まで手に入りません。今週はパーティなどにもいくつか参加の予定があるのですが、おめでたい系イベントのお土産には、たぶんぴったりな気がします。私も売り切れないうちにゲットしておこう・・・・
【追記6/15】
綾の購入方法等も含めて、
ネタフルさんが記事にしてくださいました!
→炭酸を生む「綾」の爽快さに感激、夏に日本酒ハイボール的なものはありだと思う![豊島屋酒造見学]
STEP-0 企業の行動指針/会社方針のヒアリング
豊島屋様の江戸の心は、「不易流行」という会社方針にも反映されている。経営の上では、「品質」、「信頼」、「信用」のように時代が変わっても変えてはいけないもの、「商品」「商品パッケージ」「チャネル(販路)」のように時代とともに変えるべきものがある。これらを見極めることが、地に足のついた経営に繋がっている。
「経営者としては16代目になりますが、私はリレーの一走者にすぎません。身の丈にあった経営で、江戸の良さを伝えていきたいですね。創業来500 年という会社の歴史を見据え、“尊敬される会社”でありたいと思います。」と語る吉村社長。
ーー株式会社豊島屋本店様 /日立情報システムズーー
「不易流行」という企業理念があったからこその、デザインマーケティングであったということは言うまでもありません。
[Toshimaya re-design project]
Art direction :UJI PUBLICITY(tomoko uji)
[Special thanks]
Designer : n.takiguchi
Assistant designer : s. kojima
Photographer :m.kobayashi
Web(wp) partner : DoEvery Corp., Ltd.
Producer : a.simada
Food adviser : g.igarashi