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映画『家族ゲーム』(描き文字のトーン・アンド・マナー)
家族ゲーム(1983) - 劇場予告編



鬼才と知られ、数々の話題作を世に残した映画監督の森田 芳光(もりた よしみつ)さんが先日、12月20日に亡くなられました。心よりご冥福をお祈りします。

その森田監督の事実上の出世作となった『家族ゲーム』。ご覧になられた方も多いと思いますが、私にとって、また私の家族にとっての特別な作品です。

映画『家族ゲーム』(描き文字のトーン・アンド・マナー)_e0103695_1641781.jpg


こちらにリンクしているのは、その予告編ですが、見て頂くとわかるとおりタイトル(題字)やスタッフ、キャストなどがすべて手描きのレタリングを使用して書かれており、そのレトロ感というかなんというか味わいのような、人間くさいと言うか、ハイテクノロジーではないタッチが作品全体の雰囲気の演出に多少なりとも貢献していると言えます。もしもこれが「ヒラギノ」だったら?もちろん、この雰囲気とは少しずつ違うものになっていたでしょう。(当時、これを書いている人はじつは私の母なのですが。)

母は無名の人ではありましたが、某局の開局当時から美術デザイナーとして仕事を持ち、家庭や子育てに追われながらも制作プロダクションや出版社からお仕事を依頼される、数えれば20年選手のいわばプロの描き手でした。

当時、まだお若かった森田監督は充分とはいえない制作費の中で、敢えて写植ではなく「手描き」の文字を所望されたと聞いています。どちらかと言えばテクニカルなジャンルに属するベテランの描き手にわざわざ「味わいのある、気の抜けた」文字を書かせて、その作品全体の世界感の完成度を追求されたのでしょう。

当時の現場をご存じの方であれば、「ロール」という長い紙に黒い絵の具?を塗って白い文字を端から端まで書いていく作業は容易く想像出来ることでしょう。が、現在ではとても手がかかりすぎるというか、今では考えられない作業です。

「予告編も全部描いたねぇ。」「それにしてもへたくそな字だねぇ。」
かつての自分の仕事を嘆く母。

私は、母の描いた他の仕事の(上手な)字ももちろん知っていますから、このとぼけた字を描かせ、採用することそれ自体が監督の「センス」ーすなわち作品対するこだわりであり、演出そのもの(トーン・アンド・マナー?)ーだったのではないかと思っています。


名作ですので、ぜひ見たことのない方は一度ご覧になってみてくださいね。

【追記】12/25(日)
→BSプレミアムで森田芳光さんが手がけた映画「家族ゲーム」の放送が決定 - ザテレビジョン
BSテレビでも放映するようですね。ご興味のある方はぜひどうぞ。
http://www.news-gate.jp/2011/1221/35/





家族ゲーム [DVD]





今日はクリスマスですね。
お仕事もまだありますがお時間を頂けたので、そろそろチキンでも仕込みましょうかね。。




みなさんもどうぞよい休日を!メリークリスマス☆
by ujipublicity | 2011-12-24 17:10 | タイポグラフィーとか