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『「超」入門 失敗の本質』 “日本に欠けているグランド・デザインの視点”
ダイヤモンド社様より献本御礼。
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『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』は累計52万部の組織論の名著『失敗の本質』を23のポイントでダイジェストで解りやすく紹介している「敗戦に学ぶ」組織論であり経営戦略の本だと思いますが(テーマそのものは非常に重いです)、私のようなブランディングやデザイン担当者も含め、中長期的な視点で結果を出したいと望むプロフェッショナルであれば、今もっとも注目すべき新刊の中の紛れもない一冊。

不勉強でお恥ずかしい限りなのですが私は原著を読んでおらず、著者の鈴木博毅さんの書籍もはじめてですが、読みやすさもさることながらともかく面白くて一気に読んでしまいました。

「状況が実態より良いようなフリをすることは、最終的にほぼ確実に破滅に繋がる」

本書のわりと最後の方で中で紹介される、『なぜリーダーは「失敗」を認められないのか―現実に向き合うための8の教訓』からの一文ですが、ブランディングのためのデザインとは「水増ししてよく見せる」ことでないということは、今までの自身の著作の中でも再三触れてきました。まさに、実体験として既に持っている「失敗の本質」のひとつです。

いかに優れた戦術で勝利を生み出しても、最終目標を達成する事に結びつかなければ意味はありません。戦略のミスは戦術でカバーする事はできない、とはよく指摘される事ですが、目標達成につながらない勝利のために、戦術をどれほど洗練させても、最終的な目標を達成する事はできないのです。(「超」入門 失敗の本質より)


「戦略があいまいで、目標に繋がらない勝利に一喜一憂する」「グランドデザインの視点がない」など、厳しい指摘の連続ではありますが、では、もしも、それらの問題点に目をそむけてしまったらどうなるのでしょうか。それについては歴史的な「事件の記述」と共に語られていきます。
「戦略となる指標」を取り出すことをせず、「体験そのものを再現」することに執着すると、目の前の勝利と同じ型を追いかけることにつながります。


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下記も印象に残った部分です。

『失敗の本質』から推測できる、チャンスを潰す人物の特徴を三つ挙げてみましょう。

①自分が信じたい事を補強してくれる事実だけを見る
②他人の能力を信じず、理解する姿勢がない
③階級の上下を超えて、他者の視点を活用することを知らない

ノモンハン事件でも「真じたいこと(願望)」を補強してくれる事実のみを拾い上げて、逆に自分たちの思い込みに反する現実、兆候を示す情報はことごとく無視しています。

(中略)

このような重大な人的問題は、勝利を逃すだけでなく、避けることができたはずの大敗北を生み出すなど、たびたび日米戦闘の勝敗を分けることになっていきます。(「超」入門 失敗の本質より)

歴史的事実として、大東亜戦争開始時には、戦争に反対する日本人より、戦争に肯定的だった日本人の方が多かったたことが指摘されています。
「醸成された空気」の危険性を見抜けず、日本人が合理的な議論を放棄して猛進してしまった事実は、多いに反省すべき点です。これからの日本と日本人は、「空気の欺瞞」を打ち破らなければならないことを肝に銘じるべきです。(「超」入門 失敗の本質より)

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成功事例や美談ばかりを取り上げて現実社会に目を背けてしまったり、空気にのまれて同じ指標(トレンド/流行なども含め)ばかり追いかけてしまうというのは大変に残念ではありますがデザインの業界でも、いや自分自身の中にも思いあたる部分があります。いやはやなんとも…

自身の近著はもちろん、デザインマーケティングのセミナーなどでも折に触れてお話しているテーマではありますが「グランド・デザインの視点」を持つことの大切さ、そもそも「戦略とは何か」というかなりの難題がすっとコンパクトに入ってくる、わかりにくいその実像を実感を伴って知ることのできるという意味でかなりの良書ではないかなと感じました。

リーダー論が主題ではありますが、イノベーションを塞ぐ壁の正体から「集団の空気」の問題など、読み飛ばすところがまったくない、というか読みどころのみの詰まった一冊でした。ご興味を持たれた方はぜひ読んでみてくださいね。


目次もつけておきます。

目次
●序章 日本は「最大の失敗」から本当に学んだのか?
ざっくり知っておきたい戦史
失敗例としての「6つの作戦」

●第1章 なぜ「戦略」が曖昧なのか?
01 戦略の失敗は戦術では補えない
02 「指標」こそが勝敗を決める
03 「体験的学習」では勝った理由はわからない
04 同じ指標ばかり追うといずれ敗北する

●第2章 なぜ、「日本的思考」は変化に対応できないのか?
05 ゲームのルールを変えた者だけが勝つ
06 達人も創造的破壊には敗れる
07 プロセス改善だけでは、問題を解決できなくなる

●第3章 なぜ、「イノベーション」が生まれないのか?
08 新しい戦略の前で古い指標は引っくり返る
09 技術進歩だけではイノベーションは生まれない
10 効果を失った指標を追い続ければ必ず敗北する

●第4章 なぜ「型の伝承」を優先してしまうのか?
11 成功の法則を「虎の巻」にしてしまう
12 成功体験が勝利を妨げる
13 イノベーションの芽は「組織」が奪う

●第5章 なぜ、「現場」を上手に活用できないのか?
14 司令部が「現場の能力」を活かせない
15 現場を活性化する仕組みがない
16 不適切な人事は組織の敗北につながる

●第6章 なぜ「真のリーダーシップ」が存在しないのか?
17 自分の目と耳で確認しないと脚色された情報しか入らない
18 リーダーこそが組織の限界をつくる
19 間違った「勝利の条件」を組織に強要する
20 居心地の良さが、問題解決能力を破壊する

●第7章 なぜ「集団の空気」に支配されるのか?
21 場の「空気」が白を黒に変える
22 都合の悪い情報を無視しても問題自体は消えない
23 リスクを隠すと悲劇は増大する

おわりに――新しい時代の転換点を乗り越えるために


『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』




【編集後記】
いよいよ4月になりましたね。今年は桜は遅めなのでしょうか。近所の吞川の桜のつぼみはまだ5〜6分咲きのように思えます。2月、3月は他にも魅力的な本がいろいろとあって、頂いたものはもちろんほとんど読んでいるのですが期末の忙しさも重なってほとんどブログを書けませんでした(><;)。ご紹介したい本はたくさんあるので、4月はがんばってブログも更新したいものです。
by ujipublicity | 2012-04-02 21:38 | 献本&書評